このシリーズは、世界初のトレーディングカードゲームであるマジック・ザ・ギャザリング(MTG)のアートやフレイバーに無理やりメタルを紐付けて強引にオススメ曲を紹介する記事群である。
絆リス
緻密な世界観と魅力的なアートをベースとした圧倒的なフレイバーを持ったMTGを、より豊潤にしうる音楽であるメタル・ハードロックの数々を紹介していければと思う次第である。
これを読んでいただいたマジックプレイヤーが気に入ったメタルを見つけだすきっかけとなれば望外である。
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【MTG】カニヴァインとCarcass「Surgical Steel」【メタル】
イコリア注目のカードとカニヴァイン
これを記している時点(2020年4月14日)で、まさに「イコリア」が発売する直前である。
最も注目されている神話レアの一つが悪魔の職工である。
2マナのクリーチャーだが能力がモリモリ。
しかもなにやら悪いことをしでかしそうな雰囲気が立ち込めている。
モダン好きの筆者としては、モダンでどのデッキが採用できそうか気になるものである。
今の所最も噛み合うと思われるデッキとしてカニヴァインが挙げられる。
2018年末ころに勃興したブリッジヴァインの系譜のデッキであり、かのホガークとも交わりつつ、さらにホガークとともにパーツが禁止され、しかし色と形を変えて今に至るデッキである。
昨今青を採用し、面晶体のカニや不可思の一瞥などのセルフミルできる(自分のライブラリーを墓地に落とす)カードを採用した形に落ち着いたようである。
さて、悪魔の職工に話をもどそう。
当然テキストの上の能力「自分の墓地のクリーチャーの数だけ+1/+1修正」は、墓地利用することで威力が増す。
墓地利用の代表格と言えばドレッジだが、恐血鬼や秘蔵の縫合体などの墓地からいなくなってしまうクリーチャーが多く、その能力は威力を出しづらい。
その点カニヴァインはそもそも大量のクリーチャーが入っており、墓地にとどまるクリーチャーも多いので大胆なサイズアップが見込める。
更に下の能力も、「自クリーチャー生贄」という通常なら重いコストを要求するものだが、カニヴァインには生贄に捧げやすい1マナクリーチャーが多い。
特に縫い師への供給者は、むしろ生贄に捧げたいクリーチャーであろう。
ただでさえ軽いのだが、その能力も軽さからは破格である。墓地肥やしと復讐蔦の復活に活躍する重要な潤滑油的クリーチャーとなっている。
まったくである。
平気で生首を掴んじゃってるこのなんともゴアな趣きは他のカードにそうそう見られない。
そんな縫い師への供給者ファン(?)に紹介したいメタルアルバムがある。
「リヴァプールの残虐王」ことエクストリームメタルバンドCarcassのアルバム「Surgical Steel」である。
MTGプレイヤーよ、CarcassのSurgical Steelを聴くべし
Carcassはイギリスのメタルバンドである。
ジェフ・ウォーカー (ボーカル、ベース)とビル・スティアー (ギター、ボーカル)を軸に、メンバーを何度か変えつつ、一度は解散したものの12年の時を経て再結成した経歴を持つ。
その解散を挟んで2013年にリリースしたのが17年ぶりとなる6枚目のアルバム「Surgical Steel」である。
まず収録曲の邦題について触れておきたい。
- 「1985」
- 「スラッシャー食肉処理場 – Thrasher’s Abattoir」
- 「バラバラ死体梱包運搬システム – Cadaver Pouch Conveyor System」
- 「血塊 – A Congealed Clot of Blood」
- 「血みどろエプロン – The Master Butcher’s Apron」
- 「死のサイクル – Noncompliance to ASTM F899-12 Standard」
- 「ぶつぶつ悪魔の製粉所 – The Granulating Dark Satanic Mills」
- 「人間消費不適格 – Unfit for Human Consumption」
- 「サージカル・スティール 316L式 – 316L Grade Surgical Steel」
- 「監禁ネジネジ銃 – Captive Bolt Pistol」
- 「処刑の丘 – Mount of Execution」
伝統的に(?)Carcassの邦題はなにやらぶっとんでいる。
気になった方は是非各自初期のアルバムの邦題を紐解いていただきたい。
さて、この字面を見ていると件の縫い師への供給者を連想せずにはおれないだろう。
聴いてみればどれもエクストリームな響きに満ち溢れた名曲ばかりである。
激しく押し寄せるギターリフ、ビルの魂こもるギターソロ、ジェフの特徴的なダミ声、そして随所に紛れ込むどうしようもなくロックな響き。
その激しさの中に熱を帯びた情緒が確かに潜む。
そして毎度心揺さぶられるのだ。
Carcassを聴いているとそんなことをよく感じる。
製粉所でセルフミル!
アルバムにはおすすめ曲だらけなのだが、とりあえずMVが存在するThe Granulating Dark Satanic Millsをおすすめしたい。
ぶつぶつ悪魔の製粉所である。
魂ごと解体して粉々にすり潰しちゃう製粉所の歌である。あー恐ろしい!
ちなみにそこで使われているのはこんな製粉機、というか《石臼/Millstone》であろう。
製粉所でレッツセルフミル!
おまけ情報 1stと2ndのジャケットがすごい
長く活動し解散も経験する中でCarcassの音楽性には変遷がみられた。
このSurgical Steelの形にたどり着くまでは紆余曲折を経ている。
徐々にデスメタルやメロディックデスメタルと呼ばれる形にシフトしていったのだ。
ところで最初期のCarcassはいわゆるグラインドコアと呼ばれる、平たく言って「物凄く攻撃的なジャンル」の先駆け的存在であった。
その際にリリースしたのが以下の2枚である。
- 1stアルバム『腐乱屍臭』 – Reek of Putrefaction (1988年)
- 2ndアルバム『真・疫魔交響曲』 – Symphonies of Sickness (1989年)
このジャケットこそ、ものすごく縫い師への供給者である。
もし興味があれば頑張って紐解いてみていただきたい。
なかなかショッキングである。
ちなみに1st,2ndの曲自体は紹介した「Surgical Steel」とは趣きがかなり異なるが、なかなかくせになるものがある。
是非併せて聴いてみていただければ幸いである。
Reek of Putrefaction / Carcass
おわりに
ということでカニヴァインの使い手に(限らず広く)オススメなメタルアルバムがCarcass「Surgical Steel」である、という話であった。
4枚目の「Heartwork」というアルバムも名盤なので、気に入った際には是非手にとって見てほしい。
また2020年4月時点で、新譜が予告されている。楽しみなものである。
とにかく、是非Carcassの凄まじい音を、さらにそのうちに秘めた熱いロックな魂を感じ取り自らのライブラリーを掘り進めていただければ幸いである。
サージカル・スティール コンプリート・エディション/CD/QATE-10083